令和7年12月定例月議会本会議(令和7年12月15日)で行った一般質問の記録を掲載します。
1.枚方市立やすらぎの杜について
2.こども性暴力防止法を踏まえた対応について
3.児童相談所について
※これは正式な議事録ではございません。正式な議事録は、数か月後に市役所や図書館、市議会のホームページで閲覧することができます。
※質問・答弁の順序は、読みやすいように前後入れ替えて掲載をしています。
1.枚方市立やすらぎの杜について
【かじや 質問1】
まず「1.枚方市立やすらぎの杜について」お聞きします。
本市の火葬場である「やすらぎの杜」では、特に冬季を中心に火葬予約が混み合い、火葬日がなかなか決まらない、あるいは決まっても長期間待たなければならないという声が寄せられています。
全国的に高齢化が進み「多死社会」へと移行する中、本市においても死亡者数は年々増加しており、令和2年度は3,996人だった死亡者数が、令和6年度には4,813人へと、わずか4年間で800人以上増加しています。
こうした状況を踏まえると、火葬件数が今後さらに増加することは避けられず、市民が故人を心静かに見送るためにも、円滑に火葬日を確保できる環境整備は極めて重要です。
さらに、火葬日が長期間確定しない場合には、葬儀費用の増加、ご遺族の精神的負担の長期化、安置場所の確保といった現実的な負担が生じることから、適切な時期に火葬を実施できる体制を整えておくことが不可欠です。
今年の予算特別委員会で、我が会派の志甫議員からも、市民が優先的に予約できる仕組みづくりや、1日あたり20件としている火葬件数の見直しを通じて、市民の利便性向上を図るよう要望したところです。
そこで、その後の市の取り組み状況について確認します。
まず、本年1月から3月の火葬実施日において、受付が上限に達した日数はどの程度あったのか、また混雑緩和に向けて市が講じた取組内容と、その効果についてお聞きします。
【兼瀬環境部長 答弁1】
本年1月から3月における火葬予約の状況としまして、火葬実施日89日のうち72日について受付がいっぱいとなりました。
また、混雑緩和の取り組みとして、本年2月5日より予約受付開始日を従来の5日前から10日前へ変更しております。
予約受付開始日を変更した効果については、「いつまで待たされるのかわからない」といった葬儀予定が決まらないことへの不安解消に寄与したものと考えています。
【かじや 質問2】
それでは、順次2回目以降の質問と要望をさせていただきます。
まず「1.やすらぎの杜について」お聞きします。
予約受付開始日を早め、市民の不安解消につながる取組を実施されたことは、一定の効果があったものと評価しています。
しかしながら、火葬日そのものがなかなか決まらない状況は改善されたものの、決まってから実際の火葬日まで長期間待たなければならないケースは依然として続いており、市民の負担は大きいままです。
先の予算特別委員会では、「近隣自治体の動向等を見極めながら、繁忙期における市民の優先的な火葬予約について検討する」との答弁がありました。
そこで、現在の予約制度が、市民の利用機会を圧迫する要因となっていないか確認するため、昨年度の火葬件数に占める市外利用者の割合、そして本年1月から3月の繁忙期における市外利用者の割合についてお聞きします。
あわせて、近隣自治体で市民優先予約を導入している具体的な取組事例についても、お聞かせください。
【兼瀬環境部長 答弁2】
昨年度に実施した火葬件数6,314件のうち、市外利用者は1,151件で、その割合は約18.2%です。
また、本年1月から3月の繁忙期に実施した火葬件数は1,732件で、そのうち市外利用者は303件、割合は約17.5%です。
次に、近隣自治体の取組事例として、四條畷市、大東市、守口市及び門真市で構成される飯森霊園組合では、繁忙期にあわせて市民優先予約を拡大されています。
また、寝屋川市では、市外利用者の予約数を制限することで市民の利用機会を確保されています。
【かじや 質問3】
市外利用者の割合が、繁忙期に限らず年間を通しておおむね2割弱を占めている状況を見ると、現在の予約制度では、恒常的に市民の利用機会が圧迫されているのではないかと考えています。
先ほどの答弁でも示されたように、近隣自治体ではすでに市民を優先して予約できる仕組みづくりが行われています。
昨年度と同様に、今冬も市内外から火葬予約が集中することが想定される中で、本市として、市民の利用機会を確保するために、市民利用を優先する予約制度を実施する考えはあるのか、見解をお聞きします。
【兼瀬環境部長 答弁3】
昨年度から実施している予約受付開始日の変更による効果検証を行うとともに、他市の先行事例を踏まえ、令和9年1月に予定している斎場予約システムの更新にあわせて市民利用を優先する取組を検討していく考えです。
【かじや 意見】
高齢化の進展に伴い、今後も火葬件数が増加していくことは容易に想像できます。
現時点では、予約受付開始日の変更や、市民利用を優先する取組を検討していくとのことですが、将来的には1日あたりの火葬件数の増枠を含めた抜本的な見直しが必要ではないかと考えます。
また、火葬の予約が混み合うことで、火葬日がなかなか決まらず、決まった場合でも長期間待たなければならないような事態は、市民の心身両面の負担を考えても、可能な限り避けるべきです。
実際に、市民の方からは「やすらぎの杜の予約がなかなか取れず、葬儀会社から他市の火葬場を案内された」という声もお聞きしています。
他市の火葬場を利用する場合は高額な使用料が必要となり、やすらぎの杜であれば2万円で済むところ、他市利用の場合は10万円程度かかると伺っています。
本市の火葬場で市外利用を受け入れている一方で、市民が他市の火葬場に行かざるを得ない状況が生じるのは、本末転倒と言わざるを得ません。
やすらぎの杜が、今後も市民にとって故人との最後のお別れを静かに、心ゆくまで行える大切な場所であり続けるためには、短期的には市民優先の予約制度をできるだけ早期に実現すること、そして中期的には、将来需要への対応を指定管理者の選定要件に取り入れるなど、安定的で持続可能な運営体制の構築が不可欠です。
以上の観点から、引き続き積極的な改善を進めていただくよう要望します。
2.こども性暴力防止法を踏まえた対応について
【かじや 質問1】
次に「2.こども性暴力防止法を踏まえた対応について」お聞きします。
近年、全国的に子どもに対する性犯罪が後を絶たず、子どもの安全をめぐる社会的な不安は一層高まっています。
子どもへの性暴力は、心身の健全な発達に深刻な影響を及ぼすのみならず、子どもの人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではありません。
こうした状況を受け、国においては、子どもを性暴力から守るための法整備として、令和8年12月25日から「こども性暴力防止法」が施行される予定です。
施行まで約1年を残す今、本市としても、制度の趣旨を正しく理解し、現場で実効性のある運用につなげていくことが強く求められていると考えます。
そこでまず、現状、市立小中学校や市立保育所等において、日頃から子どもへの性暴力を未然に防止するため、どのような取り組みを行っているのか。
また、万が一、事案が発生した場合には、子どもの安全と権利を最優先に、どのような対応体制を取っているのかお聞きします。
【新保学校教育部長 答弁1】
「2.こども性暴力防止法を踏まえた対応について」お答えします。
子どもへの性暴力については、子どもの安全を最優先に、こうした事案を未然に防ぐための対策を徹底しています。
各学校においては、服務規律の徹底を図るため、研修の実施を継続的に行い、教職員の意識向上に努めております。
また、市立小中学校で講師を任用する際には特定免許状失効者管理システムや官報情報検索ツールを活用し、児童生徒への性暴力等により教員免許が失効・取り上げとなった事実の有無を必ず確認しています。
放課後の保育の場として、留守家庭児童会室におきましては、支援員による見守り体制の徹底と、見通しのよい室内配置や防犯カメラの活用など安全な環境整備に努めるとともに、子どもが困りごとを伝えやすい関係づくりを進め、子どもアンケートによる意見把握も行いながら、研修を通じた性被害の未然防止に取り組んでいるところでございます。
また、性暴力の疑いが生じた場合には、被害児童生徒等を徹底して守り通す姿勢のもと調査を行い、必要に応じて警察署や、医療、心理、福祉及び法律に関する専門家と連携し、保護・支援については、スクールカウンセラー等の相談につなぐ等、必要な措置を講じてまいります。
【田中こども未来部長 答弁1】
公立保育所等における防止策としましては、すべての職員を対象に、子どもたちとの適切な関わり方について、職種ごとに気をつける場面を具体的に例示した上で研修を実施しているほか、おむつ替えや着替えのときには、パーテーションを利用して周囲から見えないように工夫するなど環境整備に努めております。
加えて、児童福祉法の改正を受け、令和6年4月1日からは保育士を新たに雇用する際に、国のデータベースにより性犯罪前科の有無を確認しております。
また、未然防止を徹底することが第一義ではございますが、万が一事案が生じた場合には、関係機関との連携のもと被害児や保護者への適切な対応を最優先に取り組んでまいります。
【かじや 質問2】
次に「2.こども性暴力防止法を踏まえた対応について」2回目の質問をします。
これまでから、学校や保育所等において、様々な対策を取っておられることは理解しました。
しかしながら、全国的には子どもに対する性暴力事案が後を絶たず、法施行後は、子どもに対して教育・保育等を行う事業者に対し、法律に基づいた性暴力防止の取り組みが求められることになります。
法律の対象となり得る施設は、学校や保育施設にとどまらず、学習塾やスポーツクラブなど多岐にわたります。
そのうち、本市の直営施設・事業としては、小中学校園、認可保育施設、児童発達支援センター、乳児等通園支援事業などが該当すると認識しています。
また、義務ではないものの、こども家庭庁に申請し、認められた場合に法の対象となる事業として、放課後児童健全育成事業や病児保育事業なども含まれます。
そこで、これらの本市直営の施設・事業において、法律の対象となる職種には、具体的にどのようなものがあるのかお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁2】
直営施設・事業における対象職種につきましては、教員や保育士など、子どもと常に接する職種は一律対象となります。
雇用形態の違い、雇用契約の有無にかかわらず、短期間の労働者やボランティアなども対象となります。
また、それ以外の事務職員や調理員などの職種につきましても子どもに継続的に接する可能性がある職種は実態に応じて現場判断で対象にできることとなっております。
【かじや 質問3】
直営施設・事業における対象職種の範囲については、一定理解しました。
法律の施行を受け、事業者に求められる取り組みとしては、日常的な見守りや相談体制の整備に加え、性暴力の疑いが生じた場合の調査や、被害を受けた子どもの保護、さらに、子どもと接する従事者に対する研修の実施や、特定性犯罪前科の有無の確認など、その内容は多岐にわたります。
先ほどの答弁から、これまでも性犯罪防止に向けた一定の対策が講じられてきたことは理解しましたが、法施行により、従来の取り組みと比べて、具体的にどの点が大きく変わるのかお聞きします。
また、市が申請をもって認定対象となる事業の実施主体となりうる場合、どのような対応をとることになるのかお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁3】
これまでの対応の大きな変更点といたしましては、法の対象となる事業者に対し性犯罪防止措置を講じることが義務付けられ、これまでは特定性犯罪前科の有無を確認する対象が、新たに雇用する教員や保育士を対象としておりましたが、これまでからこどもと常に接し従事している方を含め全ての職種の方が対象になってまいります。
また、議員お示しの市が認定対象となる事業の実施主体となりうる場合には、本制度の対象事業としていくべきと考えており、こども家庭庁への申請など認定手続きを経たうえで、本制度の趣旨に則り変更点にも留意しながら取り組んでいく必要があると考えております。
【かじや 質問4】
法律の趣旨を踏まえると、民間事業者に対しては、義務対象に限らず、申請をもって認定対象となる事業者についても、積極的に「認定」を促していくことが重要です。
とりわけ、市自らが実施主体となる施設や事業については、率先して認定を取得し、子どもの安全確保に対する姿勢を示していくべきと考えます。
そのことを踏まえて、本制度の対象となる民間事業者への、市の関与の在り方についてお聞きします。
法律の施行により、私立の学校や保育施設に限らず、学習塾やスポーツクラブなどおいても、子どもへの性暴力を防止するための取り組みが求められることになります。
こうした民間事業者に対し、市として、どのような形で関与し、適切な制度理解や準備を促していく考えなのかをお聞きします。
また、法により義務付けられた事業者ではないものの、一定の要件を満たし「認定」を受けることで法律の対象となる事業等について、市としてこの制度をどのように位置づけているのか、また、今後どのように対応していくのか見解をお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁4】
対象となる民間事業者に対しましては、できるだけ早く準備を進めていただく必要があるため、現在、庁内の各部署から関係する事業者へ国からの通知やリーフレットを用いて周知啓発を図っているところでございます。
また、「認定」をもって法律の対象となる事業等に対しましても、今後国より示されるガイドラインを踏まえ周知等を図り適切に対応してまいりたいと考えております。
【かじや 質問5】
昨今、学校の授業や部活動等において、民間事業者の活用が進められていますが、こうした民間事業者も、法律の対象となり得る中で、本制度は対象となる事業者や従事者の範囲が非常に広く、その数も多くなるものと考えています。
先ほどの答弁では、関係する事業者に対して周知啓発を図っているとのことでしたが、学習塾やスポーツクラブなどを含め、多様な民間事業者が対象に含まれる中で、現時点において、本制度の趣旨や内容がどこまで行き届いているのかについては、率直に言って疑問を感じるところです。
国は、制度が混乱なく開始できるよう、地方自治体に対し、法施行前の対応事項をスケジュールとして示しており、「枚方市子ども・若者総合計画」においても、国の対策を踏まえ、本制度の取り組みを推進することが明記されています。
そこで、市として、現時点における本制度への対応状況や準備の進捗をどのように認識しているのかお聞きします。
また、本制度は教育委員会やこども未来部をはじめ、複数の部署にまたがる制度であることから、部署ごとに考え方や対応にばらつきが生じないよう、制度全体を統括する窓口の設置や、統一的な基準・マニュアルを策定する考えがあるのか見解をお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁5】
国は、施行の1年前となる今月末を目途に、制度の詳細な指針となるガイドラインを示すとしており、その後年明けからは、全国規模での説明会の開催など、本格的な周知を実施される予定になっております。
本市におきましては、引き続き国からの通知やリーフレットを用いて庁内共有を図るとともに、今後さらに、ガイドライン等を踏まえた上で、あらためて本制度に関して統括する部署の調整を行うほか、議員お示しの窓口の設置や基準・マニュアル策定を含め、必要な対応について、庁内調整を図りながら検討を行い、適切な制度実施につなげてまいりたいと考えております。
【かじや 意見】
特に、最初の質問において答弁された、日頃からの未然防止に向けた研修や見守り体制、また、万が一事案が発生した場合の関係機関と連携した対応や、被害を受けた子どもを守り通す姿勢については、非常に重要な取り組みであると受け止めています。
今後は、これまで積み重ねてきた未然防止の取り組みや事案発生後の対応を、法施行後の制度運用においても確実に生かし、個々の取り組みにとどめることなく、全庁的な共通認識として整理・共有し、実効性のある体制として構築していくことを要望します。
一方で、他の自治体ではすでに市のホームページ等を活用し、制度の周知を進めている例も見られます。
本市においても、国の対応を待つだけではなく、できることから速やかに着手するとともに、まずは職員一人ひとりが制度の趣旨や内容を正しく理解することが不可欠であると考えます。
あってはならない事案を未然に防ぐためにも、早い段階から実効性ある体制整備を進めていただきたいと思います。
また、本制度は市の直営施設にとどまらず、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者も対象となり得ます。
事業の担い手は民間であっても、そこを利用するのは枚方市の子どもたちです。
市としては、制度の趣旨を踏まえ、民間事業者に対しても準備が遺漏なく進められているかを確認し、法に基づく取り組みが適切に行われるよう、必要な周知や助言、さらには進捗の把握・管理についても、統括的に検討していただくよう要望します。
そのうえで、例えば市のホームページに制度の概要や対応方針を分かりやすく掲載するなど、今からでも直ちに取り組めることは少なくありません。
枚方市の子どもたちが、教育や保育、さまざまな活動の場において、安心して過ごせる環境を確実に整えていくためにも、これまでの取り組みを土台としながら、速やかで適切な対応を要望しておきます。
3.児童相談所について
【かじや 質問1】
次に「3.児童相談所について」お聞きします。
先月行われた教育子育て委員協議会において、児童相談所設置基本計画(案)が示され、本市が児童相談所の設置に向けて、いよいよ具体的に動き出す段階に入ったと受け止めています。
これまで本市では、まるっとこどもセンターで発生予防の取り組みや相談支援体制を構築してきましたが、児童相談所を設置することで、これまでの支援にとどまらず、一時保護といった、より高度で専門的な機能を市が直接担う方向へ踏み出すものであり、子ども施策における大きな転換点となるものです。
今後は、命に関わる極めて重い判断を、市として直接引き受けることになるという、重大な責務が伴うということです。
これは単に体制を拡充するという次元ではなく、行政としての覚悟が求められる決断だと考えています。
そこでまず、本市が児童相談所を設置する必要性や目的、また、その背景にはどういった問題があるのか確認の意味も含めてお聞きして、1回目の質問を終わります。
【田中こども未来部長 答弁1】
「3.児童相談所設置について」お答えします。
まず背景としましては、近年、子どもや家庭をめぐる問題が複雑化・多様化しており、全国の児童虐待相談対応件数は、平成28年度が12万2,575件、令和5年度が22万5,509件と倍増している状況であり、深刻な児童虐待事例も依然として発生しています。
本市においても、児童虐待相談件数は令和4年度が793件、令和5年度が881件、令和6年度で966件と増加傾向にある状況でございます。
このような状況を踏まえまして、これまで本市が行ってきた児童虐待の予防や早期発見のための取り組みに加え、一時保護や措置の機能をもって、虐待予防から早期対応、子どもの自立支援に至るまでを一貫して本市が担えるよう児童相談所の設置を目指すものです。
【かじや 質問2】
次に「3.児童相談所について」2回目の質問をします。
先ほどの答弁でも、全国的にも、本市においても、虐待相談の対応件数が増加しているとのことでした。
児童相談所は、虐待が起きた際に迅速に対応する「最後の砦」として極めて重要な役割を担いますが、同時に、そもそも虐待を発生させないための取り組みをどれだけ強化できるかも、自治体にとって大きな責務だと考えます。
相談対応件数が増えている現状を踏まえれば、事後対応の体制整備だけでなく、支援の入口となる段階で、リスクを把握し、家庭への寄り添いをより早い段階から行う必要があります。
そこで、本市として、虐待そのものを減らすための「未然防止策」をどのように位置づけ、今後どのように取り組んでいかれるのか、見解をお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁2】
議員ご指摘の通り、発生した虐待に対応するだけではなく、それらを未然に防止する取組も重要であると考えており、今後、児童相談所の設置に向けた取組とあわせて、児童相談所とまるっとこどもセンターそれぞれの役割を明確にしながら、効果的な未然防止策を検討していきたいと考えています。
【かじや 質問3】
虐待が表面化する前の段階で、家庭の変化や小さなサインをどれだけ早くつかみ、支援につなげられるかが、子どもの生命・将来を左右します。
未然防止策についても、しっかりと取り組んでいただくよう要望しておきます。
一問目の質問では、本市として児童相談所を設置する必要性や目的についてお聞きしましたが、その必要性を踏まえたうえで、ここでは「府との役割分担」という観点から、さらに確認しておきたい点があります。
現在、本市については、大阪府の児童相談所である「中央子ども家庭センター」が管轄しており、府が一定の専門的機能を担っている状況です。
こうした体制が既に存在する中で、あえて本市が独自に児童相談所を設置し、これまで以上に大きな責任を引き受ける必要があるのか――この点は、しっかりと整理しておく必要があります。
そこでまず、国や大阪府は、中核市が児童相談所を設置することについてどのような見解を示されているのかお聞きします。
また、本市が児童相談所を設置すると、現在の大阪府の児相体制では十分に対応しきれない部分をどう補えると考えているのか、具体的なメリットやこれまでの府の取り組みと異なる点などがあればお聞きします。
さらに、児童福祉法に基づき、大阪府が、本市の児童相談所設置の取り組みをどのように支援しているのかについても、併せてお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁3】
まず、中核市が児童相談所を設置することに対する国や大阪府の見解についてですが、全国的に児童虐待相談対応件数が増加傾向にあることや、相談内容が複雑・多様化している中で、国は、児童相談所の管轄区域の人口をおおむね50万人以下とするとともに、住民にとってより身近な行政機関である中核市の児童相談所設置について、支援その他の必要な措置を講ずること、及び都道府県による支援措置について法定化されています。
こうした方針を背景に、府内におきましても、中核市での児童相談所設置が進められているところです。
児童相談所を設置する一つのメリットとしましては、市には地域住民の情報やニーズ、課題等を直接的に把握することができ、多くの行政サービスを始めとする様々な地域資源を持っており、支援が必要な子どもや家庭のリスクやニーズを一早く且つ的確に把握したうえで、地域資源を最大限活用した、より迅速かつきめ細やかで一貫した支援を行うことが出来ると考えております。
また、大阪府の取り組みと異なる点としましては、現在、一時保護施設で生活する子どもたちは、在籍校に通学することは距離や時間、また子ども本人への負担に繋がることから困難な状況であると伺っております。本市に一時保護施設を設置することになれば在籍校への通学が可能となり、これらの取り組みもメリットの一つと捉えています。
次に、大阪府からの支援につきましては、この間、児童相談所設置に係る必要な事務手続きなどに関する助言をいただいている他、本市職員の派遣研修受け入れの調整や、今年の4月に児童相談所を開設した豊中市の事例を共有していただくなど、本市の児童相談所設置に向けてご協力をいただいているところです。
【かじや 質問4】
児童相談所の設置に向けて、最も大きな課題の一つが“人材の確保”です。
この間も、様々なところで意見が出ていますが、福祉分野では全国的に専門職の確保が難しく、本市においても例外ではなく、大きな問題であると考えています。
基本計画案では、児童相談所に必要となる職員体制が示されていますが、このような厳しい採用環境の中で、どのようにして必要な人数と専門性を備えた職員を確保していく考えなのか、見解をお聞きします。
また、仮に人数を確保できたとしても、児童相談所の業務は極めて高度な専門性が求められ、未経験職員だけでは円滑な運営は困難であると考えられます。
そこで、職員を着実に育成し、開設初日から機能する体制を整えるために、どのような人材育成策を講じていくのか、併せてお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁4】
最短で令和12年度の児童相談所設置に向けて、計画的な職員採用を進めていきたいと考えており、人材確保に向けた取組として、この間、取り組んでいる福祉系大学等へのリクルート活動に加えまして、新たに、福祉職の実習生受け入れや、福祉職に特化したセミナーの開催などについても検討を進めるとともに、児童相談所業務の経験者採用についても検討していきます。
また、人材育成に向けては、令和8年度から、児童福祉司や児童心理司として勤務できる職員を大阪府子ども家庭センターなどの他自治体の児童相談所へ派遣し、通告受理後の初期アセスメントや一時保護した子どもの心理的ケアなどの業務を経験できる部門に派遣する予定としており、開設後すぐに円滑な運営が可能となるように取り組みを進めます。
【かじや 質問5】
児童相談所開設後は、当直や夜勤などの新たな勤務体制が発生することが想定されます。
多くの職員にとって、これまで経験したことのない働き方となり、特に現職の職員にとっては採用時に必ずしも想定していなかった勤務内容であることから、戸惑いや負担が大きくなることが懸念されます。
さらに、一時保護をはじめ、子どもの安全に直接関わる非常に重い責任を担うことになるため、精神的なストレスも相当なものになると考えています。
こうした状況を踏まえると、児童相談所で勤務する職員が心身の健康を損なうことなく働き続けられるよう、メンタルヘルスを含めた職員へのフォロー体制をどのように構築していくのかが大変重要になります。
そこで、当直・夜勤を伴う新たな勤務体制や、業務の重さを踏まえたうえで、職員へのメンタルヘルスケアや支援体制について、どのように取り組んでいくのかお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁5】
児童相談所に勤務する職員が心身に不調をきたすことなく、健康に働き続けることができるよう、夜勤時などでもしっかりと休息がとれる環境を検討するとともに、日ごろからコミュニケーションを高め、不安や悩みを感じたときに誰にでも相談でき、また、困難な状況が発生したとしてもチームとして対応できる体制の構築に取り組んでまいります。
【かじや 質問6】
児童相談所の設置は、市にとってきわめて大きな事業であり、部局をまたいだ全庁的な体制づくりが不可欠だと考えています。
特に、児童相談所の運営には100人以上の職員が必要とされ、その中でも福祉専門職は重要な核となる存在です。
一方で、本市では現在でも福祉職の確保が容易ではなく、体制によっては既存部署の職員が不足するのではないかという懸念もあります。
児童相談所に多くの福祉職を充てることになれば、その分、他部署で生じる人員の穴をどう補うのかという課題は避けられません。
こうした状況を踏まえると、児童相談所の設置を進めるうえでは、人材の確保と配置を市全体でどう支えていくのかが非常に重要になると考えています。
そこで、福祉職が不足する中で、児童相談所に必要な人材を確保しつつ、既存部署の体制にも支障が出ないようにするため、本市としてどのように全庁的な協力体制を構築し、取り組みを進めていくのか見解をお聞きします。
【田中こども未来部長 答弁6】
議員ご指摘のとおり、人材確保をはじめとする児童相談所設置の取り組みを進めるにあたりましては、全庁的な協力体制が必要であると認識しております。
現在策定作業を進めている基本計画案につきましても、庁内委員会である「児童相談所設置検討委員会」において、人材の確保・育成並びに、施設整備に関することなど多くの関係部署の協力をいただきながら検討を進めているところでございます。
また、今後実施を検討している福祉職の実習生の受け入れにつきましても、子ども未来部のみならず、健康福祉部や福祉事務所などと協力体制を図り、児童相談所も含めた枚方市全体としての福祉専門職の確保につなげてまいりたいと考えております。
さらに、令和8年度からの職員の派遣研修につきましても、全庁的な協力体制が必要であり、先月19日に庁内の福祉職を対象に本施設に関する概要や派遣研修、開設後の連携した子どもと家庭への支援のあり方等に関する説明会を開催するとともに、今月の初めに開催されました理事者会議におきまして派遣研修に関する全庁的なご協力のお願いをさせていただいたところでございます。
今後も引き続き、派遣研修や実習生の受け入れ、施設整備に関することなど、庁内連携を十分に図りながら児童相談所の設置に向け取り組んでまいります。
【かじや 質問7】
必要な福祉職を確保する過程で、既存の部署にしわ寄せが生じないようにすることが極めて重要です。
特に、派遣研修の段階から一定数の職員が児童相談所関連業務に従事することになりますので、その分、他の現場の体制が手薄になることのないよう要望しておきます。
こうした人員面の課題に加え、児童相談所を設置するとなれば、これまで市が担ってこなかった重い責任が直接生じることになります。
とりわけ、一時保護など重大な判断を要する場面では、所長をはじめ管理職の負担は非常に大きくなると認識しています。
それでもなお、枚方市が独自の児童相談所を設置するという決断をした理由について、改めて、市長の思いと覚悟をお聞きします。
【伏見市長 答弁7】
まず、私が児童相談所の設置をめざすことについては、今年の代表質問でも述べさせていただきましたが、「枚方で育つ子ども達を何としても守りたい」という強い決意のもと、一時保護など児童相談所が有する強い権限を持つことで、「全ての子どもが一人の人間として尊重され、子どもを守ることができる」と考え、市独自の児童相談所を設置することとしたものです。
直近でも、様々な事情により家庭から離れて、枚方市で生活できない子どもが100人を超えている状況であり、一刻も早く、児童養護施設の開設とあわせて、枚方で暮らし続ける環境を整えていきたいと考えています。
児童相談所の設置に向けては、特に財源面や人材確保等の面で課題が大きいのは事実でありますが、全庁が一丸となって取り組むことで課題は克服していけるものと考えています。
また、私自身も、財政的な課題解決のために、子ども家庭庁や近畿財務局への要望活動を率先して行ったところです。今後も機会あるごとに働きかけていきます。
児童相談所の設置は新たな業務や責任を担うことに繋がりますが、「枚方市の子どもは枚方市で守る」という私の思いを職員と共有し、職員一人ひとりの力を結集して児童相談所の設置に向けて取り組みを進める覚悟です。
【かじや 意見】
児童相談所は、まさに枚方の子どもを守る最後の砦となる極めて重要な機関です。
一時保護や措置といった、子どもの命や人生に直結する判断を担う以上、その責任は非常に重く、生半可な気持ちで設置・運営できるものではありません。
だからこそ、設置にあたっては、財政面・人材面の課題を先送りすることなく、一つひとつ着実に解決していく必要があります。
特に人材面については、児童相談所だけでなく、福祉職を必要とする庁内の各部署も含めて、必要な専門職をどのように確保し、育成し、全庁で支えていくのかが最大の課題だと考えます。
仮に人材の確保が十分に進まず、予定どおり令和12年度に児童相談所をスタートできない事態となれば、財政的な負担が増すだけでなく、本来守るべき子どもを守れないという最も避けなければならない結果につながりかねません。
市長からは「枚方で育つ子どもを何としても守りたい」という強い決意が示されました。
その思いを現実のものとするためには、市長自らが前面に立ち、人材確保や財源確保に向けて行動する姿勢を示すことが不可欠であり、そうしたトップの動きこそが全庁の本気度を高め、職員の理解と協力につながると考えます。
市長には、児童相談所が大きな責任と負担を伴う事業であることを深く認識していただいたうえで、子どもを守るという強い思いと覚悟をもって、児童相談所の設置に向けて先頭に立って取り組まれることを強く要望します。
「枚方市の子どもを枚方市で守る」ためには、本市に児童相談所が必要であり、万全の態勢でスタートできるようにとの思いから、これまで、懸念される点について確認を行い、あえて厳しい指摘もさせていただきました。
ぜひ、こうした指摘の趣旨をしっかりと受け止め、今後の取り組みに生かしていただきたいと思います。
児童相談所の設置は決して平坦な道ではありませんが、令和12年度の設置に向けて、全庁が一丸となって課題を克服し、子どもを守る体制がしっかりと機能するよう、計画的に取り組みを進めていただくことを要望して、私の一般質問を終わります。