全員協議会(平成26年1月29日)で行った「前市長の退職手当の返納に係る枚方市退職手当審査会の答申について」の質疑の記録を掲載します。
※これは正式な議事録ではございません。正式な議事録は、数ヵ月後に市役所などで閲覧することができます。
【かじや 質問】
国家公務員退職手当法には、刑事事件を起こした職員に対し、退職手当の支給一時差し止めや返納を求める規定があり、市の条例も法にならって同様の規定が盛り込まれています。そこでまず、なぜこの規定が盛り込まれたのか、その理由及び目的についてお聞きします。
また、そもそも退職手当はどのような性質のものなのか、なぜ支給されるのかも含めてお聞きします。
【長沢総務部長 答弁】
国家公務員退職手当法において、退職手当の返納規定が設けられたのは昭和60年3月の同法改正時であり、また、一時差し止め規定が設けられたのは平成9年6月の同法改正時です。
退職手当の一時差し止めや返納等の退職手当の支給制限・返納制度については、公務員の身分を有しているときに公務員としての規律に違反し、公務に対する国民の信頼を損ねたことを非難して行う公務員法制上の制裁と位置づけられるものであり、公務に対する国民の信頼確保に資することといった目的も有しています。
本市におきましても、法改正の趣旨を踏まえた上で、枚方市職員の退職手当に関する条例の改正を行っております。
次に、公務員の退職手当の基本的な性格については、民間における退職金と同様に、勤続報償的、功績報償的、生活保障的、賃金後払い的な性格をそれぞれ有し、これらの要素が不可分的に混合しているものとされています。
特別職の退職手当の性格について明確に書き示したものはありませんが、在職月数を基に算出するよう制度設計をしていますので、勤続報償的な意味合いが強いものと考えます。
【かじや 質問】
中司前市長は、裁判において一貫して無罪を主張し続けてきたのにも関わらず「懲役1年6か月、執行猶予3年」の有罪判決が宣告され、すでに刑事的制裁が科せられています。また、マスコミ等においても事件について大々的に報道がなされ、社会的制裁も受けています。それに加えて、さらに約5000万円もの退職手当の返納という制裁を受けるという状況は、あまりにも過酷としか言いようがありません。
退職手当の支給から長い年月が経ち、すでに財産のない前市長に対して約5000万円もの大金を返納させることが、生活の破壊に繋がることは簡単に想像ができます。今後の本人の社会復帰までをも阻害するような制裁を科すことが、果たして行政の役割といえるのでしょうか。このように「溺れている者を棒で突つく」ような行為は、私の価値観とは相容れないものであり、理解しがたいものがあります。また、多くの市民の方からも、そのようなご意見を聞いており、今回の市の判断に対し非常に疑問を感じおられます。行政がここまで非人道的な処分をされる背景には、何らかの政治的意図があるのではないかと考えざるを得ません。
さて、談合事件以降、時間的にもかなり経過している状況です。退職手当審査会において「支給してから長期間が経過している場合には支給された退職手当が生活の基盤として使われてしまっており、返納を求めるかどうかについては財務状況だけでなくて、実際に返納を求めることにより、返納を命じられた者の生活が破壊されるといったことについて配慮することは一定の合理性がある」としており、裁量の客観的な基準として「支給してからの時間的な経過」を挙げています。
10年以上前に支給されたものを含めて約5000万円もの退職手当の返納を求めることについて、市が本当に妥当であると考えているのか、裁量を働かせる考えはないのかお聞きします。
【長沢総務部長 答弁】
退職手当の返納については、「在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたこと」を要件として行う、公務に対する国民の信頼を損ねたことに対する公務員法制上の取り扱いであり、刑事事件において有罪判決が確定したことにより受ける種々の社会的制裁とは、異なるものであります。
また、審査会におきましては、前市長は第2期分の退職手当を平成15年5月に受領し、第3期分の退職手当を平成19年5月に受領しており、相当期間経過している状況があるとするも、この間、前市長は最高裁判所まで争った期間が含まれていることを考えると裁量を働かせる状況とまではいえないと判断されたものです。
【かじや 質問】
前市長は、退職手当の返納の可能性について逮捕・起訴された時点で、既に知りうる立場にあったので、裁判で争っていた期間は「相当の期間として」の時間的経過を考慮する必要がないと言うことでしょうか。
そもそも前市長は、今回の事件については身に覚えがなく最高裁まで一貫して「無罪」を主張して戦っていた訳で、その間、退職手当の返納の可能性について考えることは微塵もなかったと思われます。そのことから考えると、裁判期間中の長い期間を時間的経過として考慮する必要がないということが、本当に妥当な判断と言えるでしょうか。このように無罪を主張されているケースについては、最初から罪を認められている方への対応と、一律に同じという訳にはいかないと考えます。この裁量権の部分に関しては、改めて後ほど質問いたします。
さて、市長の退職手当の返納規定については、それまで一般職の職員の退職手当の返納規定を準用していたものを、平成19年8月に「市長の給与及び退職手当に関する特別措置条例」を制定し、明文化したとのことです。なぜ、あえて明文化をしたのでしょうか。条例規定に不備があったから、わざわざ明文化したのではないかとも推測されますが、条例改正の経緯を含めてお聞きします。
【長沢総務部長 答弁】
平成19年8月に制定しました「市長の給与及び退職手当に関する特別措置条例」につきましては、前市長が平成19年7月31日に逮捕・勾留された後、同年8月21日付で辞職の申し出がなされたため、この事態に対して、以後の市長の給与に関する取扱いを明確にするために制定したものです。市長等の退職手当の返納規定については、それまで一般職の規定を準用する規定でありましたが、条例においてより明確に明示することが望ましいとの判断から、退職手当についても、その取扱いを確認し、明文化にしたものです。
【かじや 質問】
条例に不備が無かったら改正する必要がない訳で、改正してわざわざ明文化したということは、実際には誰が考えても条例に不備があったということではないのでしょうか。このような不備のある曖昧な平成7年の条例を根拠に、前市長の生活を破壊し、社会復帰をも困難にさせるような重大な行政処分を行うことが、果たして行政として適切な行為と言えるでしょうか。市長の権限は条例により制限されている面もありますが、今回の件は不備のあった過去の条例を拡大解釈して適用するもので、権限の濫用に当たるのではないかと考えます。
次に、「メトロ会談」についてですが、当時の第2清掃工場建設の経緯については先ほど鷲見議員の質問でもありましたが、平成11年12月には、大阪府都市計画審議会の議を経て、知事が都市計画案を承認していたといいますが、本事業に対し都市計画の認可が与えられたのは、それから4年後の平成15年11月でした。そこで同年12月に国に整備計画書が提出され、国庫補助金の内示を受けたのは平成16年4月であり、7月に国庫補助金交付申請書が提出されています。メトロ会談から5年が経ち、用地の買収など、ようやく事業が具体化のスケジュールに乗ったといえます。都市計画が決定されても具体化されず、凍結したままの事業は数多くあり、今回の市の認識には疑問を感じます。やはり、どう考えてもそこから事件が始まるというのは無理があります。入札が行われたのが平成17年ですから、その6年も前から談合をするものでしょうか。常識的に考えればありえないことだと思います。
通常の裁判であれば、大抵は裁判のどこかの時点で罪を認めているので、今回のようなことは起こりません。事実関係を認めているわけですから、退職手当の返納請求も問題はありません。しかし、本人が最後まで否認している事件について、その後、地検特捜部がどうなったかというのは、皆さんの記憶にも新しいところかと思います。非常に違法な取調べが行われている可能性も高いわけです。だからと言って、この裁判の証言がすべて無効であるとか、そんな事は言いません。
しかし、例えば、大林組の関係者の証言が、次第に検察のシナリオに沿った内容に変遷していく経過など、行政からも裁判の傍聴に出席していたはずですから、その時の雰囲気も含めてお分かりになっていると思います。もちろん、判決にはそのようなことは出てきませんが、そういった非常に危うい部分を起点にして、行政がこの事件を判断すべきではないと考えます。なんと言っても本市が舞台となった談合事件ですので、昨年夏頃には地検特捜部に押収された書類も戻ってきている訳ですから、改めて本市独自に総括の為の調査を始められるべきだと要望しておきます。中司前市長の退職金返還の検討については、その後からでも遅くありません。
ひとつ、確認しておきたいのですが、答申書の14ページ、全員協議会資料の通し番号では17ページの下から3行目に「退職手当の返納の要件である『在職期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたとき』における『在職期間中の行為』に、メトロ会談における前市長の発言は該当するものと判断せざるをえない」と記載されていますが、この前市長の発言とは何を指しているのでしょうか。ご本人の発言なのか、裁判記録での発言であるのか、お聞きします
【長沢総務部長 答弁】
ご指摘の「前市長の発言」とは、答申書の同じページの下から7行目に記載されております「メトロ会談において前市長が本件談合の実行行為者に対し本件清掃工場の受注を認める旨の発言」を指しております。これは本件裁判の一審及び控訴審が、罪となるべき事実に記載されている「共謀」を認定する上での重要な間接事実として、前市長の発言を認定していることによるものです。
【かじや 質問】
裁判結果だけで判断をしているから、そのような偏った答弁になるのだと思います。結果だけで判断するのではなく、プロセスについても検討し慎重な判断が必要だと思います。
さて、退職手当の返納を求める中で「裁量」について審議されていますが、市側は「裁量はない」と位置づけており、退職手当審査会では、「裁量権はないとはいえない」との見解となっています。
結論は全額返納でありますが、そのプロセスに違いがあります。この答申を受けて、裁量権について改めて検討する必要もあるのではないかと考えますが、見解をお聞きします。
【長沢総務部長 答弁】
審査会においては、元来、国家公務員退職手当法に、一部返納規定が設けられている趣旨に着目されて、本市条例の解釈として、「原則は全額返還とすべきものであるとしても、一切の裁量を排除すべきでない」との解釈をすべきと判断されたものです。
本市としましては、その検討理由を含め、退職手当審査会の判断に沿っていくところであります。
【かじや 質問】
次に退職金の全部返納と一部返納についてですが、審査会では「第2期目分及び第3期目分の退職手当の全額について返納を命じることが相当である」と答申しています。2期目からの請求というのは、「メトロ会談」の時期との関連だと思いますが、仮に返納規定が適用されるとして、2期目分が本当に必要なのでしょうか。「メトロ会談」は類推で固められたもので、内容を示す物的証拠はありません。判決でも罪となるべき事実として認定されているのは、3期目の入札前後の時期のみであるのにも関わらず、2期目分までを返納の対象とするのは、「在任期間中の行為に係る刑事事件に関し禁錮以上の刑に処せられたとき」とする返納規定の拡大解釈であると考えますが、市の見解をお聞きします。
また、審査会では原則は全額返還とすべきとしながら、一切の裁量を排除すべきであると解釈できないと判断しています。もし、裁量権の行使が可能であるとして、一部返納という形をとった場合、この一部とは、例えば3期目分のみを指すのか、または、1期4年間の約2500万円のうち一部返納が可能であるとしているのか、お聞きします。
【長沢総務部長 答弁】
「メトロ会談」での前市長の発言は、犯罪の実行行為ではないものの、「罪となるべき事実」たる「共謀」を認定するに際して重要な間接事実として扱われていることから、審査会として2期目分についても返納の対象と判断されたものです。
次に、一部返納の考え方でございますが、審査会におきまして裁量を行う要件等について審議されたところですが、結果として今回は全額返納が相当であるとの答申となっております。
【かじや 質問】
退職手当審査会からの答申については、市はこれまでと同様に尊重するとのことでしたが、今回の全員協議会で各議員から出された意見については、どのように取り扱われるのかお聞きします。
【竹内市長 答弁】
前市長の退職手当の返納につきましては、これまでも時機を見て議会に対して説明をさせていただき、また、一般質問などの機会を通じて市の考え等についてお答えしてきたところです。
今回についても同様に、条例の規定に基づく退職手当審査会からの答申について、去る12月議会の途中におきましてご説明させていただきましたが、質疑の時間を十分に取れないとのことから、今回、改めて答申内容についての質疑の機会とさせていただいたものです。
これまでから、審査会に諮問し、出された答申結果については、その見識を尊重してきており、今回についても同様に対処していく考えには立っているところです。
【かじや 意見】
本日の全員協議会は、単なるアリバイ作りやガス抜きの場ではありません。住民代表である各議員から出された意見についても審査会同様、尊重して頂くのが当然であると考えていますので、これまでのように議会軽視と言われることのないよう、真摯に対応して頂きますよう強く要望します。
また、市の最終結論が仮に当初からの主張通り「2期分の全額返納を求める」ということになったとしても、審査会の答申に至る議論のプロセスや、本日の全員協議会での議会の意見を市がどのように受け止めて、結論に至ったのか、その検討理由も含めはっきり示して頂くよう要望します。
最後に、一人の人間の生活を破壊し、社会復帰をも困難にさせるような非人道的な処分に、私は承服しかねますし、拡大解釈により不備のある条例を根拠としている点や、裁量を行う要件等の判断についても疑問が残ることから、現時点で前市長に対して、退職手当の返還を求めることには慎重であるべきであることを表明し、私の質問を終わります。